「くまのプーさん」でハチミツ好きが描かれているのは創作ではないことを実感する。人間に近づくことは熊にとっても避けたいことなのに、この魅力にはかなわないようだ。

 

 

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ある日、山の中にある1つの巣箱が倒れていた。ところが、蜂蜜はたっぷり残っている。熊であれば全部食べてしまうと聞いていたので他の動物だろうと考えて、倒れた巣箱を事務所横の管理棚(管理しやすいように1箇所に集合させている)に移動した。いたずらされないように、棚にはネットを張って一応の対策はしておいた。その数日後、薄暗くなった午後7時過ぎ、はなが激しく吠え始めた。吠えている方向を見ると、斜面の上の方に何やら黒い塊が動く姿がみえる。その後、徐々に草木の中を移動してかなり近くで物音がするまでに。車のライトで茂みを照らし驚かそうとするが、気にすることなく顔を出す始末。暗闇の中でツキノワグマ特有の白い模様が浮かび上がる。石を投げるもうまく当てられない。逃げもしない熊に恐怖を感じ、用心しながら巣箱の周りにバリケードを作って急ぎはなを連れて工房をあとにした。

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いち早く熊の気配を察知したはな

翌朝、5つあった巣箱の4つが倒され巣が荒らされていた。バリケードは全くの無意味。今年苦労して始めた巣枠式巣箱の被害が一番激しく、重箱式のものは巣を掻き出すのが大変なためか、多くが蜂蜜を残した状態で放置されていた。人が管理しやすい巣箱は、熊も食べやすかったようだ。その日のうちに残った1箱を事務所の屋根上に移動した。

最初からこうしておけばと、少し後悔した。ただ、やはり実際に被害にあってみないと本当の対策など講じることはできなかっただろうとも思う。人への被害がなかったことと、巣箱1つと大量の蜂蜜が残されたことは幸運だった。山の中の工房なので、それ相応の対策が必要だったのだ。(ちなみに、何度も被害に遭っている人は、鉄格子の中や屋根の上に巣箱をおくなどの対策をしている)当然、やめるという選択肢もあるが、様々な困難がある方がより楽しいものだ。よくニュースで山の遭難事故を目にし、そんな危険なことはやらなければいいのにと思っていたが、結局自分も似たようなものだと気付いた。危険をいかに回避するか、それがまた大きな楽しみでもある。

今年は蜂の扱いにも慣れ、群れを増やす術も身につけた。巣枠式というプロが使う巣箱も制作し、そこで飼育も始めることができた。熊にやられるという残念な結果になったが、この経験は来年以降さらに活かされることになる。熊対策を含め新たな段階にステップアップしたと思う。

暑い日々にうんざりして過ごすことの多い時期だが、ここのところ矢継ぎ早に様々なことが起こり、僕の好奇心は大いに満たされている。代わり映えのない生活ほどつまらないものはないと思っている僕にとって、記憶に残る夏になりそうです。

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