蚊を媒介して犬に寄生する虫がいる。その虫が寄生していることにより現れる様々な症状(心臓、肝臓、腎臓、肺の障害)をフィラリア症という。予防しなければいけない怖い病気だという認識はあったし今までの犬も予防してきたが、詳しいことは知らなかった。ところが、迎え入れたはながフィラリア症 陽性と診断され、様々なことを調べるきっかけとなった。治療もひと段落したので、ここで記録しておこうと思う。

 

 

ネットで調べても、大局的な情報がえられない。いろいろ調べた結果、自分なりに整理すると感染までの経路・予防・治療はこんな感じ。経験したことも合わせて記録しておきます。

誤りがある場合には、ご指摘いただければ幸いです

(経路)

  1. 犬糸状虫(フィラリア)に感染した犬を刺した蚊の口に、犬糸状虫の幼虫(ミクロフィラリア)が付着
  2. 蚊の体内で感染できる幼虫に成長、蚊の口で待機
  3. 次に刺したときに犬の体内に侵入(別の犬である必要はない 元の寄生した犬に刺せば親虫が増える)
  4. 侵入した幼虫は血管に入り体内を巡る
  5. 心臓につながる肺動脈に自然に落ち着く
  6. 肺動脈内で血中の養分を吸収し親虫に成長(長さ30センチにもなる)
  7. オス、メス揃うと子供(卵)を産み、それがミクロフィラリアとして血中を巡りだす

ある個体の血中にいるミクロフィラリアはその個体内では決して親虫になれない。蚊を媒介することで初めて感染幼虫として寄生できるようになる。親虫として心臓に近い肺動脈に寄生するためその影響は大きい。寄生虫なので宿主をすぐに殺すことはしないが(自分も死んでしまうので)、何度も刺され親虫が増えると臓器を変形させてしまうまでになるらしい。親虫の寿命は5,6年。それまでに子孫を残せれば彼らの目的は達成される。

(予防)

では、犬を飼っている人はどう予防しているのか。動物病院で処方される予防薬を飲ませているが、あれは幼虫を駆除するための駆虫薬(感染幼虫のみ駆虫できるものと、ミクロフィラリアも一緒に駆虫出来るものの2種類あり)。蚊に刺されることを完全に予防できないので、刺されたことを想定し血中の幼虫を殺すことによって予防(?)している。(この仕組みを知ると、シーズン最後の投薬時期が大切なことがわかる。)

(治療)

次に寄生されてしまった場合の治療についてはどうか。調べると3種類ある。

  1. 外科手術により親虫を体内から取り出す その後、血中の幼虫を薬で駆虫
  2. 親虫を殺す薬で駆虫 その後、血中の幼虫も薬で駆虫(親虫の死骸は体内に残る)
  3. 血中の幼虫を薬で通年駆虫し続ける(親虫の寿命5,6年が半分くらいになるらしい)

完全に除去できるので1が一番良い方法だが心臓に近い部分の外科手術のため施術できる医師が少ないのが難点。2は親虫の死骸が体内に残るため犬に与えるリスクが大きいと考えられて避けられている。そのため、治療の多くは消極的治療の3になっているようだ。その結果、2の親虫を駆虫する薬が国内では製造されなくなってしまった(売れないので作らない)。これがさらに、3を選ばざるをえない状況に拍車をかけている。ただし、何年も親虫を寄生させたままのことを考えると2が一番有効だと思うのだがどうだろうか。製薬会社の利益優先による製造中止に思えなくもないので、残念でならない。

(経過)

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傍に行っても反応なし とにかく辛いようで顔を起こすこともしなかった

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車中でも目が開けられない

さて、最後にはなの治療はどうなのか。フィラリアの陽性反応が出た後に打ったワクチン(6種)が引き金となり、1週間ほど元気も食欲もなくなり、かなり衰弱(体重が2㎏減 フィラリア治療後の方が良かったかもしれない)。フィラリア症の炎症を抑える消炎剤により徐々に回復するも(食欲がでてくる)、3の消極的治療でははなが保たないと判断。親虫が数匹だということもあり、リスクを承知で2の治療を申し出た(1は名古屋まで行かないと無理だった)。しかし、そこで初めて親虫を駆虫する薬(イミトサイド)が製造中止になっていることを知らされる。しかし、担当獣医師仲間から在庫を分けてもらえるという幸運に恵まれ、イミトサイド治療を実施。2日に分けて行った注射による治療から早10日経つ。注射後5日間が注意が必要との情報もあったので、その間は夜間も2時間おきに観察し続けた。それを乗り越え、今は安心して僕も眠ることができている。食欲にはムラがあり、調子を見ながら胃腸薬や下痢止めを飲ませる日々だが、以前のような衰弱もなく比較的元気に過ごせている。2週間は散歩も禁止(血流を良くし親虫の死骸が詰まるといけないので)と言われているので散歩には連れ出せないが、元気になってきたからか訪問客によく吠えるようになった。今までおとなしく、犬らしさを感じる場面が少なかったが、もしかしたら病気のせいだったのではと思い始めている。予定では1ヶ月後に改めてエコーなど使い親虫が死んでいることを確認、合わせて血中のミクロフィラリアを駆虫してはなの治療は終了することになる。

担当の獣医師をはじめ、アニマルレスキュー飛騨の方々のご協力もあってここまできました、深く感謝いたします。治療途中ですが、おそらくこのまま完治できると信じています。

カメラを向けると、切ない表情をするはな。少し顔がほっそりしたかな。

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(追記)

8/4

はなが入院。急に何も食べなくなり2日は様子を見ていたが、変化がないので病院へ。血液検査の結果、腎不全と診断される。フィラリアの影響は腎臓に出ていたようだ。栄養をつけるため点滴をした状態だが、流動食しか受け付けず。なんとか食べて体力が戻るといいのだが。血液検査の電解質の数字が以前から悪く、腎臓の状態を推察できなかったのが悔やまれる。腎臓機能の1/4ぐらいになって初めて数字に表れるらしい。

8/9

入院後から毎日様子を見に行くが、一番ひどい状態。相変わらず何も食べない。目ヤニと鼻水がひどく、呼吸音がおかしいのでよく観察すると、鼻の穴が鼻くそで詰まっていた。看護師さんにとってもらい、一安心。いよいよ厳しいかなと感じる。

8/10

昨日と打って変わり、食事を摂るようになったはな(まともな食事は二週間ぶりぐらい 嬉泣)。血液検査の結果ナトリウムの数値の低さから、アジソン病(副腎皮質機能低下症)を疑い、数日前からその治療が行われていたようです。ホルモンを補うため即効性はみられないが、3日目にして効果が現れてきた模様。採取した血液を東京に送り、現在詳細な結果待ち。少し希望が出てきた。

8/12

アジソン病が確定する。これにより、一生服薬が必要であることが判明。ところが、この薬が非常に高額なため、はなを個人で飼い続けることができなくなってしまった。フィラリア、そしてアジソン。様々な障害を持つはなは、今後レスキューさんにて大勢のメンバーに支えられて生きてゆくことになる。苦渋の決断だったがはなのことを考え、個人で無理するのは諦めることにした。サポートメンバーの一員としてはなを支えてゆければと思う。

 

 

 

“フィラリア症” への2件のフィードバック

  1. 献身的にはなちゃんを看病していただき、本当にありがとうございました。
    リスクの高い五日間、夜中も2時間おきにみていただいたり、食欲が落ちて食べられないのをどうにかしようと色々工夫していただいたり、通院も仕事を割いて行っていただいたり、大変なご苦労をおかけしました。
    はなちゃんが犬らしく吠えるようになり、回復している様子を伺えて、本当に嬉しく思います。
    今回の事を教訓に保護犬のフィラリア検査と予防薬について早い対応を徹底致します。
    これからの穏やかなワンコライフをお祈りしております。また、はなちゃんに会いに工房に伺いたいと思います。
    アニマルレスキュー飛騨 ナカヤ

    1. ご心配いただき、ありがとうございます。また遊びに来てください。お待ちしております!

      牧野泰之・はな

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