世の中には本当にたくさんの椅子があるので、オーダーで椅子を制作するということはほとんどありません。過去に制作したオリジナルそのままか、少しアレンジしたりすることがあるくらい。場合によっては量産されている椅子で質の良いモノをご紹介したりすることも。とにかく椅子は工程が多く、少量では価格がとても高くなってしまうのが原因。しかしオーダーチェアには、独特の魅力もあるのです。

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この椅子は、現在依頼をいただいているダイニング用チェアのモックアップ。モックアップとは原寸模型のことです。形状と座り心地を確認するのが目的なので、ホゾ組みなどはせず全てビスで固定してあります。お気づきの方もいるかもしれませんが、下敷きにしているのは有名なザ・チェア。ダイニングで使用しやすいように(出入りを考慮)肘の前位置を少し後方にずらし、背あたりをよくするために上下方向の幅を大きくするなどのリデザインをしています。このあと、座面を用意してクライアントに座り心地を確認していただくことになります。クライアントのご要望を加え修正し、ようやく本番制作に向かいます。(このモックアップはブナ材で制作していますが、本番はウォールナット材を使います)座面は革張り。革も市販のものを使うのではなく、この椅子のために原皮を鞣(なめ)すところから始めます(これは専門の業者さんに依頼)。

打ち合わせから座り心地の確認、そして本制作・納品。これがオーダーチェアの工程です。

世の中便利になってあらゆるものがネットで購入可能になってきていますが、やはりこの手のものは人と人が対面しながらでしか手に入れることができません。少し前に、人が一生に座る椅子の数は、本当に限られているという話を聞きました。だからこそ、こだわりを持って椅子を考える人がいるのです。市販されている既製品にはない、作り手の意識をダイレクトに感じることのできる椅子。それが、オーダーチェア。

制作しているうちにとても気に入ってしまったので、自分用も含めて制作しようかと思案中。とはいえ、クライアントのためのデザインなので、お伺いはしないといけませんが・・・。

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