長いあいだ気にかけていたことを実現した。

 

工房を増床する際に、絶対に死守したかったものは「トイレ」である。もちろん、従来からのスペースにもトイレはあったのだが、快適なものではなかった。共有している機械場にあり、男しかいないとはいえ自由に使うことができなかったのも理由のひとつ。自宅のトイレも家族みなのものであり、長いあいだ占有すると急かされる(当然だけど・・)。そこで誰にも急かされない、自分だけのトイレは長年の夢であった。それがついに実現した。そして気にかけていたことも合わせて行った。

それは、中古の便器を使うこと。

便器は衛生陶器の一つで、タイルや食器などと同じ焼き物である。型を使い成形された焼かれる前の便器は巨大だ。それは焼かれて縮むことを計算された大きさになっているからだ。だが使われる土やその中に含まれる水分、湿度も影響するため、同じように見える便器も、実は一つとして同じものは存在していない。あまり知られていないが、なかなか優れた工業製品なのである。

建物の寿命とともに処分・廃棄(ほとんど埋め立てられている※1)されてしまっているが、便器の製品としての寿命は実は長い。ただ残念なことに、中古はほとんど需要がなく廃棄されているのである(使用目的からしょうがないかもしれない)。水道設備屋さんの土場に放置されたままの便器たちは、きれいに洗浄すれば使えるものも多く存在するのである。

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設置後すぐに、徹底的に掃除した。水垢・汚れなどは耐水ペーパーの#1000ぐらいを使うと、きれいに落とすことができるし、一度設置してしまえば中古であることは気にならない(※2)。それよりも、廃棄される便器を救えた満足感が大きかった。とくにメーカーにこだわらなかったので、やってきたのはTOTO製であった。これも縁だと受け入れた。同色のウォシュレット便座も付いていたのだが、残念ながらこちらは故障していた。これは家電と一緒で修理などしていたらかえって高くなってしまうので、新品に買い替えた(デザインを合わせるためTOTO)。ツートンなのは、そんな理由。全ての人にお勧めはできないが、使える場所や機会があれば、中古も選択肢の一つになってゆけばと思っている(廃棄にお金がかかるので、ほとんどタダでくれるはず)。ただし、メーカーや水道設備屋はあまり歓迎しないだろう。どんどん作りたい・売りたいからである。

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まだ磨いていない手洗い部分には水垢があるが、これもいいかなとこちらは放置

※1 砕いて材料にすることも可能だはずだが、回収するシステムがないためゴミにされているのが現実

※2 残念ながら、どんなに掃除しても新品と同じ艶はでない。多くの焼き物と同じように、便器の表面は釉薬と呼ばれるものでコーティングされているが、使用により細かな傷がついてしまうため艶がなくなってしまうからだ。これを再生できれば、リユースの幅も広がると思う。

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