メンテナンスや修理も固有のヒストリーとして刻まれます

きちんと製作された椅子は、メンテナンスや修理をすることで本当に長く使うことができます。木材は水分を吸って膨らむこともあれば、乾燥によって縮み、ホゾと呼ばれる仕口が緩んでしまうこともあります。一旦、緩み始めると接着剤の効果もなくなり、ひどい場合には木部の破損にも繋がります。なので使っている椅子がグラグラし始めたら、なるべく早く修理をした方がいいのです。

修理方法はプロに聞く、任せる

以前ココナラというスキルのフリーマーケットに、一回500円でソファーや椅子の適切な修理方法とおおよその修理費用をお伝えするサービスを出品したことがあります。2回分だけでしたが需要はあって完売しました。不具合のある家具の現状写真とその症状で、どんな所に持ち込みどんな修理をすればいいのか、それとおおよその金額もお伝えしました。最近は長期保証を掲げるメーカーもありますので、製造メーカーがわかるならばメーカーに相談です。わからない場合は、お近くの椅子を自社で作っているメーカー(工房)に持ち込んで相談するという手もあります。器用な方が、ご自身でバラしてエポキシ系の接着剤で組み直した椅子を何度か目にしましたが、接着剤に頼った修理は接着剤の劣化に伴い、いずれ再度不具合が現れます。修理はプロに依頼したほうが結果的には安上がりです。

欠損した部材の再生

今回、座れるようにして欲しいと修理依頼を受けた椅子には、前貫と背がありませんでした。ホゾも全て緩み、ホゾが内部で折れている箇所もありました。フォルムからどうもウェグナーデザインのものだとはわかったのですが、それ以上はわかりませんでした。ところが、ヴィンテージ家具を扱う鎌田氏(株式会社KAMADA 代表)が工房に来られた際に、一目見るなり品番を教えていただけました(Hans.J.Wegner / Dining chair W2 / C.M.Madsen)。フォルムがわかれば、我々は欠損した部材を再生することができます。飛騨のナラを使って新しく部材を再生。乾燥で痩せてしまったホゾや折れたホゾには、木材を足して再度組み直しました。座れればいいとのことで、背は現状のまま。現在、座面を編み込んでいる最中です。

モノには固有のヒストリーが宿る

例え破損していても、長く使われてきたモノには、固有のヒストリーが宿っています。背を再生しないことで修理コストを抑えながら、そのヒストリーを伺い知る痕跡を残す。これも一つの選択です。新たに作るのもいいですが、固有のヒストリーを大事にしながら長くモノを使う。我々はこれからも、経験で培った技術を活かし積極的に修理にも取り組んでゆきたいと考えています。

 

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飛騨高山の木と革でつくるトレーサビリティ家具 

HLF / HIDA Leather Furniture ヒダレザーファニチャー

https://hlfjpn.com  

Makino wood works 牧野泰之


 

 

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