昨年から木材市に自ら出向き、原木の買い付けをしてきました。製材にも立ち会い、天然乾燥・人工乾燥を経て、いよいよ使える状況になりました。

 

僕らが使う木材は決して楽観できる状況ではありません。国内消費が低迷する昨今、大量生産大量消費という流れがなくなり、ある意味ではモノにこだわる良い時代がやってきたと思っていました。しかし、家具用材の多くは海外のもの。為替の影響や好景気の国々に材料が流れ、思うように入手できない状況が続いています。

今でも続くウォールナット人気。あまりに品薄になり価格も急上昇。高くなりすぎて使われなくなったためか、一時よりも落ち着いてきていますが、それでも為替の影響で4月より値上げの声を聞いています。夏に制作を予定している分についても、早めに契約をいただき材料確保に走っている状況です。

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(ウォールナット無垢材による全長6メートルのカウンター収納 今、1年前の同じ価格では制作できません)

最近価格上昇が目立つのがナラ。ナラと表記してあっても、実はほとんどがロシアか中国のもの。ロシアが輸出を制限したため、徐々に品薄になり価格上昇の原因になっています。そのため、大手メーカーでは以前からナラといって、ホワイトオークやレッドオークなどを使ってきましたが、小さな工房クラスのところでも切り替え始めています。そのため、ホワイトオークまで価格が上がる始末。今まであまり聞かなかったヨーロッパオークにも注目が集まっており、これもいずれ価格上昇は避けられないでしょう。そんな状況なので、ナラと正しく表記できる国産材を使っているところは、極めて稀です。

そんな動きが見え始めた数年前。周りを見渡せば木々に囲まれた環境にも関わらず、何故か地元の材料がほとんど入手できない状況に気づきました。最初は伐り出すほどないのかと思っていましたが、高山市の調べによれば市内の山林だけでも、約800万立米(面積60,000ha)の広葉樹が生えていることがわかりました。その中には、カシノナガキクイムシの影響によるナラ枯れが発生しているものもあり、大きくなった古木から最初にやられてしまうという悲しい現実に直面しています。

800万立米という数字は膨大ですが、家具用材として使えるものを対象に考えるとそんなに多い量でもありません。大きなメーカーが相手にしたら、あっという間に枯渇してしまうと思います。そんなこともあり、循環を前提にした計画的な伐採を条件とすると、使えるところは僕らのような個人工房がベストだと考えています。国産材は小さな工房にこそ向いた材料だったのです。

高山市の援助もあり、材料屋さんに交じって木材市に出入りして、入札による原木の買い付けも始めました。出てみてわかったのは、やはり伐採量の少なさでした。

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手間をかけて伐り出してきても、売れなければ意味がありません。たとえ売れたとしても、利益が出る価格でなければいけないのです。しかし買う方もプロ。いかに安く落とすかの駆け引きなので、利益を出し続けることは相当難しいと感じました。そうであれば、伐採さえも見合わせる悪循環がおきていることは容易に想像できるのです。さて、どうしたものか。ようやく一つの考えに到達しましたので、新しい試みを始めてみようと思っています。

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そんな中でようやく使えるようになった飛騨の広葉樹ナラ・クリ。できればこだわりを持ったクライアントのために丁寧に使いたいと思っています。洋服の生地と一緒で元になる材料は大事。カッティングや縫製技術がどんなに優れていても、生地がダメならばカバーすることはできません。大径木や長尺ものが少ない・小節も入りやすいなど少なからず欠点もありますが、それを補う独特の木目の美しさ・それにストーリー性。これらをどう活かすかは僕らの技量にかかっています。質にこだわりたい今だからこそ、材料にもしっかり目を向けていきたいと思っています。

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